抄録
高レベル放射性廃棄物の地層処分や石油地下備蓄などを目的とした大深度地下空間の利用に関連して, 深部地質環境での岩石の健全性の評価が改めて問題となっている。深部地質環境下での岩石の健全性の低下は岩石のダメージが進展することで引き起こされる。例えば、地質学的な要因により引きおこされるダメージはテクトニックな広域応力や熱環境などの影響などが挙げられる。また、建設時の要因として、掘削に伴う空洞周辺領域の掘削影響領域(EDZ)で起こる応力の再配分などによりクラックが進展することが知られている。このようなダメージの進展は周辺岩盤の力学的な強度低下を引き起こすのみならず、流体の通り道である水みちとして機能する。
実際に露頭やボーリングコアから深部地質環境を把握しようとする時,得られる情報は限られている.その中でもクラックの持つ情報は深部地質環境下での力学的・水理学的な状態を直接的に評価できる数少ないデータの一つであり、現在および過去の深部地質環境に関する多くの情報を内包しているといえよう。このような地質情報、例えば、鉱物脈やクラックの密度や異方性などを積極的に数値シミュレーションに反映させるためには、地質情報をより一般的な例えばテンソル量などで表現することが必要であるといえる。本論では、クラックの幾何という視点から岩石・岩盤の力学・水理学的挙動に関する最近の研究成果をまとめる。