抄録
本研究では,曹長石(Ab)–石英(Qtz)–H2O系の結晶化実験を行い,不均質核形成の効果や結晶成長速度,珪酸塩成分の輸送経路を調べた.実験はピストンシリンダ型高温高圧発生装置を用い0.8 GPaにおいて行った.出発物質はAb,Qtzの粉末を用い,組成は共融点組成(Ab69)と非共融点組成(Ab26–36,51,80)とで行った.非共融点組成では平衡な結晶化により,約5 μmの等粒状組織が得られた.Ab69では,過冷メルトから形成したと考えられるコロフォーム状Ab–Qtz共晶組織と急冷ガラス,流体から溶解沈殿反応で晶出したと考えられる空隙中の粗粒(~200 μm)で自形の結晶が見られた.以上のことから,等粒状の花崗岩は,不均質核形成が容易な斑晶を多く含むマグマから,ペグマタイトは,そのようなマグマから分離した流体相,及び結晶数密度が小さい共融点組成メルトからそれぞれ形成したと考えられる.