佐賀県天山地域に分布する変成岩類と蛇紋岩メランジュの帰属を明らかにするため,三郡帯に属する山口県長門構造帯の蛇紋岩メランジュとの地質学的・岩石学的に対比を試みた.長門構造帯の蛇紋岩メランジュは,ブロックとして結晶片岩,角閃岩および変トロニエム岩を含み,高角度の断層で周囲のペルム紀付加体堆積物と接する.一方,天山地域の蛇紋岩体は結晶片岩や珪長質岩を欠き,角閃岩のみを含む.また,周囲の変成岩類とほぼ水平な断層で接する. 長門構造帯と天山地域に分布する蛇紋岩の鉱物組み合わせは類似するが,クロムスピネルの化学組成は,天山地域の方がCr#に富み,TiO2に乏しい.メランジュ中の岩塊の構成や変成作用の特徴を考慮すると,天山地域の変成岩類・蛇紋岩メランジュは肥後変成帯に対比できる.