抄録
チリ,サンティアゴ市内を流れるLampa川で,長さ約1 kmに渡り河川水の化学的性質が変化していることが報告されている(Rocco, 2008)。川が流れるにつれてEh,pH,主要元素・微量元素・SO42-濃度が大きく増減し,元素濃度の増加は川底の堆積物の分析から硫化鉱物の溶解,微量元素濃度の減少は二次的ナノFe酸化物の関与によるものと考えられた。このようなナノ鉱物は通常河川水の化学分析に用いられる450nmのフィルターでは濾液に含まれる。そこで,450nmに加えて100, 25, 5nmのフィルターを用いることにより,ナノ鉱物を除いたあとの濾液を分析した。その結果,5nmのフィルターの濾液は他の溶液と比べて高濃度・同程度・低濃度という微量元素の濃度差があった。ナノ鉱物を形成することが期待される主要元素であるFe, Mnは5nmで増加し,3種類の微量元素の挙動と必ずしも一致していなかった。