抄録
マントルウェッジにおける加水反応を伴った流体の移動現象は、マグマ発生と密接な関係にあり、重要だと考えられる.本研究では、マントルウェッジを模擬した条件でかんらん岩の加水反応実験を行い、見積もった加水反応速度から流体がかんらん岩と化学平衡を保って移動するのか、それとも非平衡に移動するのか検討した.実験はピストンシリンダ型高温高圧発生装置を用い、580℃、1.3GPaの条件下で行った.出発物質にはサンカルロス産の捕獲かんらん岩の粉末と、蒸留水(15wt%)を用いた.実験の結果、olはopxのような鋸歯状の目立った反応組織を示さず、olよりopxの反応速度の方が速いことが示唆された.バルクの反応進行度をavramiの式でフィッティングすると、反応界面の進行度が1μm/dayのオーダーであることが分かった.求めた加水反応速度と流体移動速度を特徴的な時間で比べると、Iwamori(1998)にあったように粒界の流れでは平衡に、割れ目の流れでは非平衡になることが示唆された.