2011東日本大震災を引き起こしたようなM9.0巨大地震の震源域の大きさに対応する,現在陸上に露出する,周囲と断層で境された,しかしそれ自身はよく連続する地質体として,オフィオライト(前弧域浅部の地殻・マントル断片)と高圧型広域変成帯(マントルの深度まで沈み込んで再び上昇してきた付加体)がある.オフィオライトと高圧型変成帯の随伴関係は陸上の造山帯だけでなく現在の沈み込み帯(伊豆・マリアナ前弧)からも確認されている.今年の巨大地震のように100 km以深から海底までの断層が一気に25 m以上も動くような運動が1000年に1度発生すれば,400万年間程度で高圧変成岩を地表に露出させることができ,その実例がインドネシアから報告されている.オフィオライトとそれに伴う高圧型変成岩の衝上運動が,今回のような巨大海溝型地震の地質学的実体である可能性が示唆される.