日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本地質学会第118年学術大会・日本鉱物科学会2011年年会合同学術大会
セッションID: R1-02
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R1:鉱物記載・分析評価
和歌山県串本町田子海岸に産するsideronatrite
*石橋 隆下林 典正
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抄録

紀伊半島南部,和歌山県串本町田子海岸露頭の,marcasiteおよびpyriteを含む石英脈の周囲からsideronatriteの産出を確認した.本鉱物は橙黄色皮膜状の集合体を成して産する.肉眼的には皮殻状~土状であるが,薄片やSEMによる観察では微細な針状結晶が確認できる. X線粉末回折計で測定した回折パターンは,ICDD-PDF 17-0156のsideronatriteのものにほぼ一致するが,最強線以外の主要なピークは低角側へのシフトがみられた.得られた回折値から最小2乗法によって求めた斜方晶系の格子定数は, a = 7.33(4), b = 20.63 (13), c = 7.26(3)Å, V = 1097(10) Å3となる.化学分析はEPMA(WDX法)で行い,分析点5点の平均から,酸化物wt%の差分をH2Oとして実験式を算出した.Siは非晶質シリカの混入と判断し,式に加えていない.得られた実験式は(Na1.54, K0.00)Σ1.54(Fe3+1.04, Al0.01)Σ1.05 (SO4)2.02(OH)0.65・3.25H2Oとなり,既報のsideronatrite組成と比較して,Naに乏しい結果となった. 田子海岸産のsideronatoriteは,thenardite[Na2(SO4)], natrojarosite[NaFe3+(SO4)2(OH)6], paratacamite[Cu2(OH)3Cl],halite[NaCl]と共存する.Haliteを除くこれらの鉱物は,硫化鉱物と海水の反応による析出物であり,Fe, Cu, Sは硫化鉱物起源, Na, Clは海水起源,Alは主に周囲の堆積岩などから供給されたものと考察できる.

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