広島県東城町久代上野谷露頭の高温スカルンは、汚染岩を伴う。汚染岩の詳細な鉱物学・岩石学的な記載と生成条件の考察は行われていない。本研究では、顕微ラマン分光分析などの局所分析法を用いて、汚染岩中の鉱物の共生関係を組織的な視点で解析し、その生成過程の解明を目的とした。 分析の結果、草地・辺見(1990) により記載されたカンクリナイト族鉱物は、トムソナイト-ナトロライト-アナルサイムなどの沸石族鉱物とペクトライトであることが判明した。上 野谷露頭における沸石の産出は、過去の研究でも報告されておらず、熱水変質過程(100-200°C)の存在を立証する結果となった。 また、鉱物間の隣接組織を観察することにより、化学組成、結晶構造のトポロジーの観点からも整合的な沸石化過程を結論づけるに至った。上野谷産の各沸石は、Fe を含有することが特徴で、Feを結晶構造席に占有させながら変質できることは意義深い。