抄録
東南極セールロンダーネ山地バルヒェン山に産するBt-Grt-Sil片麻岩のマトリクスには、特徴的に丸い粗粒Zrnが偏在し、Grt斑状変晶のリムにも包有される。Grt斑状変晶の包有物としてClに富むBtも産するが、Zrnの方が外側に包有される。Clに富むBtはClに富む流体の流入を、GrtリムでのZrnの急激な増加はZrの添加を示唆するが、これらは別イベントの可能性が高い。Clに富むBtが安定に存在した温度圧力条件は約800℃、9kbarと見積もれた。マトリクスにはKfs、ミルメカイト、Bt-Qtzインターグロウス等からなる優白色脈が存在し、同様の組織をもつ疑似多相包有物はGrt中にも存在する。両者のBt組成は類似し、近隣の塩素に富むBtほどGrtとの再平衡が進んでいないから、疑似多相包有物は3次元的にマトリクスと繋がっているのだろう。丸い粗粒Zrnと優白色脈には成因関係が示唆される。