抄録
東北日本の蔵王火山の最新期活動は約3万年前より継続中である。この活動の最初期に形成したと推定された熊野岳アグルチネートの地質学的・岩石学的特徴に基づき、本噴出物をもたらしたマグマ供給系の進化について検討する。熊野岳アグルチネートは最大層厚 30mで成層構造の発達したアグルチネート~火山礫凝灰岩から成り、安山岩質火山弾を豊富に含む。噴出物はカルクアルカリ岩系のかんらん石含有複輝石安山岩 (55.2-56.2% SiO2) で、岩石学的解析結果から、地殻浅部に存在する珪長質側マグマ (63-67% SiO2) と、より深部から上昇する苦鉄質側マグマ (50% SiO2) の混合岩と推定された。地質学的・岩石学的特徴から、活動前期は苦鉄質側マグマの供給は活発であったが主に低温な珪長質側マグマだまりを流動化する熱源として寄与し、その結果、活動後期は苦鉄質側マグマの供給は少ないものの、その混合量比は増加した可能性が指摘できる。