抄録
岩手火山の長期的な噴火活動予測の基礎データとして,地質調査結果に基づく過去10万年間の噴火活動史の概略を示すと供に,その間の平均マグマ噴出物量を報告する.山体構成物量の推定には,精密重力探査結果を参考として埋積されている山体崩壊壁を復元し,その後の噴出物量を算定した.また,噴火年代については,鍵層となる複数の降下火砕物に対し新たに年代測定を行った.その結果,最近7万年間の複数の火山ステージを含む長期的な平均的噴出率は2.3~3.8×10-2 km3; DRE/ kyrとなる.岩手火山は,東岩手と西岩手に大別され,噴出物の全岩化学・同位体組成から,それぞれ別個の組成進化を辿るマグマ供給系をもつと推定されているが,平均的マグマ噴出率からは,両者に明瞭な相異が認められなかった.このことから,より深部からのマグマ供給に関して,西岩手と東岩手は共通の制御システムにより駆動されていると考えられる.