抄録
我々は今回、SPring-8に設置の川井型大容量マルチアンビル高圧発生装置を用いて、NaCl結晶のP及びS波速度と密度を、室温下で圧力12 GPaまで、473及び673 Kの高温下で圧力8 GPaまで同時精密測定することにより、圧力の絶対測定を行い、それらの結果を用いてNaClのT-P-V 状態方程式(EOS)の導出を行ったのでその結果を報告する。解析は、体積弾性率と密度についての4次のBirch–Murnaghan有限歪み式とMie–Gruneisen–Debye型熱圧力関係式を組み合わせて行った。得られた状態方程式モデルが、今回測定された高温高圧下における体積弾性率と密度の関係のみならず、既存の、常圧下におけるNaClの体積熱膨張率とその温度依存を極めて高精度で再現できることを見出した。このことは、今回のNaCl(絶対)圧力スケールの高い信頼性を保証するものであろう。