抄録
その導入に当たり科学的根拠が希薄と指摘されていたストレスチェックは、多くの対象事業場が3クール目にはいり、少しずつ知見が集積してきた。職業性ストレス簡易調査票によって、メンタルヘルス不調が一定の割合で抽出される可能性がある。また、職業性ストレス簡易調査票は、メンタルヘルス不調を多く含む長期休業を予測することが示されており、そのインパクト(集団寄与危険割合)は、ストレスチェックで評価される高ストレス状態にアプローチすることを合理化できる。ただし、対象とされるメンタルヘルス不調の頻度と、十分に事後措置が行われていない現状では二次予防的なアプローチの効果は限定的である。一方で、職場環境改善によるストレス軽減策は科学的根拠が蓄積しており、ストレスチェック制度の有効性を向上させる方策として期待されるが、現場における実務は浸透していない。今後、集団分析を用いた職場環境改善の手法の開発・改良を進めて、現場で実施が可能となるような知見を蓄積していく必要がある。