抄録
はやぶさ探査機が持ち帰った小惑星イトカワのレゴリス粒子の走査型電子顕微鏡による粒子の表面観察が行われている。イトカワ粒子の表面はへき開面、粒界で割れた破断面などで構成され、表面の一部は丸みを帯びていた。この特徴は、太陽風によるスパッタリング、マイクロメテオロイドの衝突によるスパッタリング、もしくは小惑星への天体衝突の際に誘起された地震振動による機械的摩耗により形成されたと考えられる。 本研究では、イトカワ粒子表面を摩耗する小惑星表層環境での支配的なプロセスを明らかにするため、太陽風を模擬した、鉱物への高エネルギー粒子線照射実験、振とう器を用いた鉱物粒子の機械的摩耗実験を試みた。また、新たに3つのイトカワレゴリス粒子、月のレゴリス粒子の放射光マイクロCTを用いた内部構造の分析、走査型電子顕微鏡を用いた表面観察を行い、小惑星と月表層のレゴリス粒子の表面形態の特徴の違いについても考察する。