抄録
超マフィック組成のシュードタキライト中に、特に注入脈シュードタキライト中に観察される、メルトの関与を示すスピネル岩片の特徴的な組織を紹介する。同組織は、クロムに富んだスピネル微粒子とその粒間を埋める相からなるコロナ状の組織であり、アルミに富んだスピネルを中心に含む。このコロナの厚さは、岩片が注入脈の壁から離れるに従って厚くなる。コロナを構成するクロムに富んだスピネル粒子は、中心に含まれるアルミに富んだスピネル粒子と同様の結晶方位を持つ。これらの組織的特徴は、高温の摩擦溶融メルトへのスピネル岩片の部分溶解によって形成したと理解することが出来る。コロナの外形は注入脈の内部ほど円形に近く、このことはスピネル岩片が単純溶解も被ったことを示している。かんらん岩の平衡溶融実験から、この単純溶解組織は摩擦溶融メルトの温度が1300-1500°Cを超えていたことを示す。