抄録
東北日本中部に位置する蔵王火山では、約30-10万年前の活動により複数の中規模山体が形成された。これらが現在の山体の主要部を成している。本研究は、その中規模山体の一つである熊野岳山体に注目し、その地質学的・岩石学的特徴に基づき、形成過程とマグマの組成の時間変化について検討を行った。熊野岳山体を構成する噴出物は、熊野岳東部噴出物・熊野岳西部噴出物・熊野岳山頂噴出物・馬の背噴出物の4つに分けられる。まず、熊野岳東部噴出物と熊野岳西部噴出物が形成され、次に熊野岳山頂噴出物、最後に馬の背噴出物が形成された。熊野岳山体を構成する噴出物はカルクアルカリ岩系の安山岩-玄武岩質安山岩であり、上位のものほど SiO2 量が乏しくなる傾向が認められる。また、ハーカー図上においては、大局的に見れば熊野岳山体を構成する噴出物は一連のトレンドを形成しているように見えるが、詳細に見ると各噴出物に違いが見られる。