東南極セール・ロンダーネ山地東部に産する泥質片麻岩は、大陸衝突に伴う高温変成作用時(600Ma)のClに富む流体活動を記録しており、その温度圧力条件は約800℃、0.8GPaであった。同試料は、Clに富む流体流入に伴い、LREE、Thが抜け、HREE、Zr、Yが添加されたことを示す微細組織を持つ。同山地中央部に産する変マフィック岩には、主たる面構造を高角で切る、ザクロ石と角閃石から成る小岩脈が貫入する。脈の中心から離れるにつれ、角閃石と黒雲母のCl濃度が下がることから、脈はClに富む流体流入によって形成されたと分かる。この流体流入条件は、壁岩が約690℃、0.9GPa以下の条件であった。Clに富む流体活動は、岩相を問わず、セール・ロンダーネ山地の東西200kmに渡り線状に分布し、変成ピーク期から後退変成期の複数段階にわたって起きているから、大陸衝突帯におけるメジャーな流体活動であろう。