抄録
オマーンオフィオライト北部サラヒ岩体の基底部に分布する高Cr#のかんらん岩がハルツバージャイトのフラックス溶融によって形成される過程について,単斜輝石の微量元素組成とOzawa (2001)の開放系溶融モデルによる検討を行った.サラヒ岩体基底部のかんらん岩のスピネルCr#と単斜輝石のCe/Yb比の間に正の相関が得られた.LREEに富む流体の浸透による低Cr#のかんらん岩のフラックス溶融によって,高LREE/HREEのかんらん岩を説明できる.高Cr#のかんらん岩は,高い流体の流入量と高いメルト分率を要する.一方,スピネルCr#が0.5以下のかんらん岩が剪断帯に沿って帯状に分布し,その単斜輝石はLREEに枯渇している.これは,レルゾライトにN-MORBメルトを極少量流入して部分溶融させることで説明でき,沈み込み帯の流体の影響を免れ,中央海嶺下で獲得した組成が残存している可能性がある.