抄録
東南極セール・ロンダーネ山地中央部ブラットニーパネに産するGrt-Opx-Hbl片麻岩には、主たる面構造を切って、GrtとHblから成る幅1cmの小岩脈が貫入する。脈の中心から離れるにつれ、HblとBtのCl濃度とHblのK濃度は下がり、PlのNaに富むリムは脈から離れるほど薄くなるため、このGrt-Hbl脈は、NaCl-KClを含む高濃度塩水の流入によって形成されたと考えられる。地質温度圧力計を用いた温度圧力見積もりにより、この高濃度塩水は、片麻状構造の形成後、後退変成期初期に流入したと分かった。さらに、Hbl中のZn, Sr, Ba, Pb, U濃度は脈から離れるにつれて低下し、Nb, Y, REE濃度は脈から離れるほど上昇するため、これらの元素は脈の形成時に、流入・流出したと考えられる。今後さらなる解析を進めることで、高濃度塩水活動に伴う物質移動の解明が期待される。