生体鉱物は様々な鉱物学・結晶学的特徴を有していると言われている。Pokroyら(2007)は、軟体動物貝殻を構成するあられ石の格子定数が無機的なあられ石に比べ異方的に変化していることを報告しているが、この特徴が他の生物起源のあられ石にも見られるかを調べるため、非生物起源のあられ石を含めた21サンプルの格子定数を測定した。またこれらのあられ石の熱的安定性の違いを調べるため、あられ石-方解石の転移温度を決定した。あられ石の3つの軸長は試料によってばらついているが、軸率を求めると、異方的な変化をしているあられ石は海生の軟体動物の貝殻に限られ、淡水の軟体動物貝殻ではそのような特徴は見られなかった。一方あられ石-方解石の転移温度については、すべての生物起源あられ石で無機鉱物あるいは合成のあられ石よりも60-100℃程度低くなっていたが、陸生動物の貝殻はほとんど同じ転移温度を示した。