2022 年 13 巻 5 号 p. 752-757
はじめに:腰椎変性すべり症の病因は,椎間関節の矢状化が重要な発症因子の一つと考えられている.腰椎変性すべり症について年代間で比較した報告は少なく,本研究では椎間関節および椎間板などの椎間構成要素に年代間での差異があるかを検討した.
対象と方法:対象は腰椎変性すべり症のため手術を行なった症例とし,50歳代から80歳代まで各年代の4群間で男15例,女15例の各30例ずつを無作為に抽出した.計120症例240椎間関節と120椎間板を比較した.計測は単純X線立位側面像とCTを使用し,検討項目は,椎間関節角,椎間関節角の左右差,男女差,椎間関節の変性度,椎間板の変性度とした.
結果:高齢になるに従い椎間関節角は小さくなった.各年代を通じて椎間関節の変性は高度だった.壮年層の50歳代と高齢層の80歳代では後者の方が椎間板の変性度が高かった.椎間関節の左右差と男女差について有意差は見られなかった.
結語:脊椎の加齢性変化は椎間板から始まるとされる.椎間板が変性を起こした結果,脊椎の後方支持組織である椎間関節が椎体を支えきれなくなった時に椎体すべりを生じる可能性が考えられた.