抄録
地球深部に沈み込むスラブかんらん岩層では、深さ60-300km(圧力2-10GPa)でいわゆる稍深発地震が起こっている。これまでアンチゴライトの脱水に起因した岩石の脆性化が主要な原因とされてきたが、1-2GPa以上の高圧下におけるアンチゴライトの脱水脆性化や剪断不安定化の詳細はよく分かっていない。我々は放射光X線と高圧変形装置、AE測定システムを組み合わせ、開放系の実験セルを用いて圧力約8GPaまでの一軸圧縮変形場でアンチゴライトの固相変形、脱水変形実験を行ってきた。本発表ではこれまでに行った高圧変形実験の結果から、特に固相領域でのアンチゴライトの強度と剪断不安定化について報告する。これまでのところ固相変形、脱水変形ともに剪断不安定化につながるような現象は確認されていない。今後は剪断変形場や流体のpermeability、部分的に蛇紋化した組織の影響などを検討していく必要があり、それに関する予備的な実験結果もあわせて報告する予定である。