抄録
Tissint 隕石(Shergottite)は火星起源の隕石で ある。XAFS 法を用いた Tissint 隕石の表面とコアの Zr の局所構造解析を行い、地球産テクタイト、クレーター 付近で形成される衝撃ガラス、火山ガラ ス、雷管石、バデレアイトと比較すること で、隕石衝突による火星離脱時や地球大気 圏突入時に受けた環境推定を行った。 Tissint 隕石のコア部と溶融ガラス部の Zr 局 所構造解析より、それぞれバデレアイト と雷管石、スーバイトと 同様の局所構造を持つことが明らかになっ た。バデレアイトと雷管石の形成温度から Tissint 隕石コアの形 成温度は 1900-2300°Cの間であると推測される。スーバイト に似た Zr 局所構造を持つ、Tissint 隕石の表 面部は 900-1300°Cというコア部と比べて低 温で形成されたと推測される。Zr局所構造よりTissint隕石の表面部とコア部の形成環境に制限条件の付加と、Zr局所構造解析により天然ガラスの形成環境の詳細な推定に成功した。