抄録
中国東部の蘇魯地域は山東半島北東端から南西へ延びる広域的な片麻岩地帯である。その中の栄成地区のChijiadianに産するザクロ石カンラン岩は700℃以上では4GPa以上の著しく高い圧力を示すとの報告がある。一方、同じChijiadianに産する藍晶石エクロジャイトは約3GPa, 800℃という最高変成条件が推定されている。本研究では、この推定圧力ギャップが地質温度圧力計の不確定さによるものかを検討する。Grt-Cpx-Ky-SiO2相圧力計(Ravna and Terry,2004)とザクロ石―単斜輝石温度計(Nakamura,2009)を組み合わせてエクロジャイトの温度圧力推定を行った。Chijiadianの藍晶石エクロジャイトは700℃で平均4.0GPaの推定圧力となった。ザクロ石カンラン岩はGrt-Opx圧力計(Taylor,1998)とGrt-Cpx温度計(Nakamura,2009)の組み合わせにより5.0GPaで800℃という高温高圧条件が得られた。先行研究と比べ同一露頭のエクロジャイトとカンラン岩の推定圧力差は緩和された。