抄録
本研究では,高校生(952人,回収率96.1%)の発達障害に対するイメージ,知識及び意識の実態と傾向を明らかにするために質問紙調査を行った。結果,発達障害の用語としての認知度は全体的に高く,学年が上がるにつれ向上する傾向がみられた。一方,障害のある人との接触経験は,学年や性別にかかわらず限られていた。高校生は接触経験の機会が十分ではなく,時間的な経過のなかで得られる情報に依存していると考えられた。また,高い認知度が肯定的なイメージの形成に影響しており,それらは基本的知識の程度とも関係していた。しかし,高い認知度や肯定的イメージは,必ずしも正確な基本的知識を根拠としていなかった。生徒は一般論としての発達障害に関する社会全体での取り組みの重要性は認めながらも,自らの能動的な活動の展開には消極的な意識を示した。漠然とした経験やイメージが知識によって実質化され,根本的な理解が促進される可能性を示唆した。