2019 年 28 巻 2 号 p. 273-282
本研究では,知的能力障害のあるASD児を対象として,標的とするルールを絞り,ドッジボールを行うメンバーの動きを明確にするボードを使用した指導を実施し,ルール理解が促されるか,また,ルール理解率の上昇に伴い実際のドッジボール場面でのルール実施率を促すかを検討した。その結果,ボードの導入だけでは,ドッジボールのルール理解率,実施率に変化は認められなかったが,標的とするルールを絞り,ドッジボールのメンバーの動きをボードによって複数回確認する指導を実施すると,理解率,実施率どちらにおいても上昇した。このことから,知的能力障害のあるASD児において,標的とするルールを絞り,ボードによりドッジボールでの個々の動きを明確にする指導が有効である可能性が示唆された。考察では,ドッジボールのルール理解と実施指導について,知的能力障害のあるASD児がドッジボールに参加しやすい条件について論じられた。