2020 年 29 巻 1 号 p. 57-70
知的発達に遅れはないものの読み困難を示す小学6年生1名を対象に,読書の音声サポートと本文中の語彙確認がパッケージになっている既存の一般向け民間教材の使用前後における読みの流暢性の変化を測定した。受講前の本児は文字を読むとすぐに疲れ,読書の持続は困難であった。本児は塾でこの教材を24回(35~50分間/回)通常受講した。特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドラインの有意味語の音読時間は,受講開始9カ月前の小5時から受講直後の小6時で,41秒(小5平均20.5±5.4)から21秒(小6平均20.3秒±4.1)へと向上した。その他の変化として,語彙力,読解力,言葉の想起の向上および読書時の疲労感の減少が認められた。今後は,対象者を増やして検証を行い,この教材により読みの流暢性が促進する読み困難のタイプを明確にしていくことで,読み困難児・者に対する支援法の選択肢が増えるものと考える。