抄録
大阪府南部の岸和田市の都市域から都市郊外の21箇所の孤立社寺林において,木本植物の在/不在データを収集し,地域に生育する木本植物種全体を保全するためのアンブレラ種の選定を試みた.選定法はLambeck(1997)が示した焦点生物種選定手法に基づき,各脅威カテゴリーに対して最も敏感な種を複数選定する方法を用いた.その結果,小面積化に最も敏感に反応した種としてアリドオシ(Damnacanthus indicus)およびツルコウジ(Ardisia pusilla)が,また孤立距離増大に対して最も敏感な種としてアリドオシ,ツルコウジ,ヤブムラサキ(Callicarpa mollis)が選定された.この3種の焦点生物種より,導き出される緑地保全・創出ガイドラインは,(1)少なくとも0.82 haの面積の森林を保全もしくは創出すべきであること,(2)大面積林からの距離が0.80 km以下の森林を保全もしくは創出すべきであることであり,これらの基準を満たすことによって,自生する木本植物の90%以上の種が保全できることが明らかになった.