2020 年 25 巻 1 号 p. 53-68
海岸マツ林は重要なグリーンインフラの一つであるが,現在,その多くは放置に伴う遷移や松枯れ病によって劣化してきている.そのような中,福岡県福津市の海岸マツ林は,地域住民を主体とする自律的活動で荒れた状態から再生され,継続的な管理作業及びマツ林を活用したイベントが行われている.当地を対象に,地域住民が海岸マツ林の管理に主体的に取り組むようになったプロセスと,それを誘導してきた福津市の地域自治の促進に関する政策・施策を明らかにした.そして,福津市の政策・施策過程を,ガバナンス論をベースに評価した.海岸マツ林の再生・保全に係る活動のエネルギーは「子供の頃に見ていた白砂青松の景観を取り戻し,再び人々が憩う場にしたい」という,体験に基づいた地域で共有されている価値であった.そして,福津市の後押しによって創出された「郷づくり推進協議会」が活動のエンジンとなっていた.海岸マツ林を誰がどのように継続的に管理してゆくのかとの課題に対して,福津市は,権限と財源を「郷づくり推進協議会」に移譲しながら地域自治を強化することで,ガバナンス型問題解決を導いてきていた.