景観生態学
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調査研究報告
愛知県と岐阜県の道の駅における山菜販売に影響を及ぼす地理的条件
夏原 由博篠崎 紗季
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2020 年 25 巻 2 号 p. 265-270

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抄録

生態系サービスとしての山菜は過疎地域を活性化する資源となりうる.道の駅での山菜販売量は,山菜を入手するための(半)自然地と居住地とが隣接するモザイクな土地利用があり,同時に都市から訪れる購買者によって決まると考えられる.土地利用のモザイク性が高いほど山菜の種類が豊かである一方,都市から距離の離れた山間地では購買者数は減少するだろうという仮説のもとで,地理的条件が道の駅での山菜販売に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする.

愛知県と岐阜県の道の駅22駅について,2016年1-7月に販売された山菜の品目別販売数を調査票によって調べ,品目組成と販売数に影響を及ぼす地理的条件を単相関分析および一般化線形モデルGLMにより解析した.

その結果,33種類の山菜が販売されていた.道の駅あたりの販売数は,山菜の品目数,利用者数と正の相関が,近隣大都市である名古屋市(人口重心地点)からの距離と負の相関があった.利用者数は近隣大都市からの距離と負の相関がみられた.利用者あたり販売数を応答変数としたGLMによる解析では,説明変数に品目数のみを含むモデルがAIC最小のモデルであった.一方,品目数は土地利用の多様度や人口密度など地域属性との有意な相関が認められなかったが,GLMで都市からの距離が115 km程度で高い2次曲線のモデルが選択された.

山菜販売数は,利用者数と販売品目数によって影響を受けることが明らかとなった.前者は主に都市からの距離の影響を受けるため,改善は難しいが,後者は道の駅や販売者の工夫によって改善できることが期待できる.

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© 2020 日本景観生態学会
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