グリーンインフラ(G.I.)の普及啓発には,美しさや楽しさなどの感性的な訴求要素も重要であることが指摘されている.その好例として,本研究で「雨樋アート」と定義する事例がある.雨樋アートとは,貯留浸透を意図した施設へ雨水を移動させる機能はそのままに,意匠を工夫することで美しさ,楽しさ,教育・啓発効果などの付加価値を加えた雨樋のことである.書籍等で幾つかの事例が紹介されているが,まとまった調査報告はない.そこで,日本における応用の可能性を探ることを目的に,雨樋アートの画像をオンラインにより収集し,その種類や分布などの概況を整理した.その結果,総計351枚の画像が見つかった.設置場所が判明した画像162枚の内,119枚が米国であり,ポートランド市などG.I.の導入に先進的な地域に分布が集中していた.雨樋の改変部位等を基準に雨樋アートの形態分類を作成し,分類ごとに集計した結果,鎖樋や雨樋の流出口のみを改変したタイプが全体の64%を占め,比較的施工が容易なものが取り組まれ易いことが分かった.また,全体の27%が治水や自然環境の保全と関わりの薄い意匠であり,多様な興味関心からなる取り組みを包容してきたこともG.I.の推進に寄与している可能性が示唆された.