谷戸湿地におけるヘイケボタルの明滅飛翔を高感度デジタルカメラで記録して発光位置までの距離をその最大発光強度から算出し,明滅飛翔行動における飛翔軌跡を3次元座標として解析した.ヘイケボタルが明滅飛翔時に利用する2つの異なる微生息環境について,湿地の上部を水辺植生の樹冠が覆う空間と,樹冠が湿地上部にかからない空間とで比較した結果,ヘイケボタルは谷戸湿地の水辺植生が形成する微生息環境に応じて飛翔行動を変えており飛翔高度や飛翔範囲に相違が見られた.ヘイケボタル飛翔行動の3次元解析により微生息環境の相違を把握する本手法は,里山水系に残されている多様な微生息環境を評価することに繋がることが検証された.微生息環境とヘイケボタル生態との関連性把握がホタル保全活動の新たな評価指標となり,ホタル明滅の華やかさに捉われない保全活動や環境教育への有効なフィードバックとなり生物多様性を保全した地域づくりに繋がることが期待される.