近年,人為的に改変された地形における災害が問題視されている一方,そのような地形に希少な生態系が存在する事例がある.そこで,人為的に改変された地形の広域推定手法を開発した.本研究では,過去にたたら製鉄が行われていた,岡山県真庭市の津黒高原を対象地とした.まず,地域住民への聴き取りとオルソ画像,航空機により取得したLiDARを用いたCS立体図により土地利用を伴う改変された地形を抽出した.CS立体図では水田の畔やたたら製鉄にともなう鉄穴流し跡など,オルソ画像では識別できなかったものが判読でき,オルソ画像と立体図を併用することで,人工改変地形の抽出精度が改善された.次に,LiDARを用いたDTMから作成した緩傾斜と急傾斜の密度を幾何平均することで,人工改変地形を推定した.緩・急傾斜の閾値を8パターン設定し,χ2検定により人工改変地形推定値の偏りを検定した.その結果,全てのパターンで有意な偏りを検出した.また,緩傾斜角の閾値が7.709°,急傾斜角の閾値が42.169°の時にχ2値が最大となり,これを改変された地形を最も説明する傾斜角の閾値とした.人工改変地形推定値は,水田,道路,改良牧野で高い値を示し,改変されていない地形では低い値を示した.エラーマトリックスにより抽出した改変地形と人工改変地形推定値の精度を確認し,カッパ係数を算出したところ,中程度の一致と判定された.これらのことから,本研究で開発した手法により,人工改変地形が分布している可能性が高い箇所を推定できることが明らかとなった.