抄録
空間的な基盤情報の整備を通じて湿原環境の効果的な保全に寄与するため, 北海道北部のサロベツ湿原を対象地域として, 衛星リモートセンシング及びGIS技術を用いて, 広域的に湿原の現存植生を把握し区分する手法について検討を行うとともに, 時間的な変化を抽出する手法について併せて検討した.その結果, 現地で取得した植生区分ごとの分光情報及び植生相観情報から, 多変量解析の手法を用いて衛星画像による湿原植生の区分が可能であることが明らかとなり, ステップワイズ判別分析手法を用いて, ASTER及びLandsat画像から, 高い一致率を有した4区分及び7区分の植生区分図を作成することができた.さらに, 1991年と2000年のLandsatを比較し, 植生変化を抽出することを試みた結果, ササ植生の増加, ミズゴケ植生の減少傾向を定量的に示すことができた.併せて, GISのベクターデータであるポリゴン及びラインを図上に設定することにより, モニタリングサイト及びモニタリングラインを設け, より詳細な植生変化傾向を分析することができる手法について提案を行った.