日本地方財政学会研究叢書
Online ISSN : 2436-7125
研究論文
コンパクトシティが自治体財政に与える影響
竹本 亨赤井 伸郎沓澤 隆司
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2019 年 26 巻 p. 87-104

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抄録

 本稿では,「基準化された標準距離」を都市のコンパクト化の度合いを示す指標として用いて,都市のコンパクト化が基礎自治体の歳出に与える影響を分析した.その結果,「基準化された標準距離」に関して一人当たり歳出総額はU字型となっており,一人当たり歳出総額が最小となる「基準化された標準距離」が存在することが示された.つまり,財政的に適度なコンパクト化の度合いが存在することが明らかとなった.そして,その最小となる「基準化された標準距離」よりもコンパクトでない市町村は全体の4分の3もあり,それらの市町村ではコンパクト化によって歳出が低下する可能性があることが示唆される.さらに,目的別歳出の衛生費と土木費,消防費,教育費,さらに細目の小学校費と中学校費の合計についても同様の結果となった.これらは一人当たり歳出が最小となる「基準化された標準距離」が歳出総額のそれよりも小さく,コンパクト化の効果が発揮される領域が広いことを示唆している.すなわち,コンパクト化の効果がより広範囲な市町村で発揮される費目と言える.

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© 2019 日本地方財政学会
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