2020 年 27 巻 p. 115-133
本稿の目的は,市区町村の森林環境譲与税譲与率の試算値と,2014年度から2016年度までの林業費平均額との相関分析から,現行の譲与基準と譲与割合の「妥当性」を検討することである.分析の結果,森林環境税・環境譲与税が創設された主たる目的である私有林人工林の管理について,林業費の水準が上位20%の市区町村(第5五分位)では,その面積割合に見合うだけの譲与税収がもたらされていないこと.同時に,下位20%の市区町村では全国比わずか0.5%の私有林人工林面積を有するに過ぎないにもかかわらず,譲与税収の1割が配分されることを明らかにした.また,回帰分析により,その原因が各市区町村の人口数基準によって譲与割合の30%が決定されるためであることを明らかにした.同じく,仮に林業費の水準に近い形で譲与税収を配分するとすれば,人口数基準の譲与割合を4%まで縮めることが望ましいことを示した.