日本地方財政学会研究叢書
Online ISSN : 2436-7125
研究論文
米国テキサス州の2006年企業課税改革
——課税ベースをめぐる議論を中心に——
松井 克明
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2023 年 30 巻 p. 109-134

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抄録

 本稿は2006年に行われた米国テキサス州の企業課税改革における課税ベースの議論を分析対象とし,州企業課税改革の背景を明らかにする.2006年企業課税改革では,それまでの事業税の課税ベースを有限責任パートナーシップなどに拡大したテキサスマージン税(TMT:Texas Margin Tax)を導入した.TMTは修正取引高税に位置付けられ,税率をかけて税額を算出するグロスマージンは「総収入の70%」,「総収入から売上原価を差し引いた金額」または「総収入から人件費を差し引いた金額」の選択制という複雑なものとなった.州憲法で所得課税が制限されているテキサス州では企業課税改革の議論は行われてきたが,法案はなかなか成立しなかった.州最高裁から初等中等教育財政システムの違憲判決により改革の期限を切られたことから2006年に改革が実現した.2006年企業課税改革は, 事業税改革による負担増と地方財産税減税がセットで行われたものであり,それまで税を負担してきた多くの企業にとっては減税となった.一方で地方財産税の減税は一時的なものにとどまった.

 同時期の2005年に中西部州のケンタッキー州,オハイオ州,2007年のミシガン州でも導入された修正取引高税は,2010年カリフォルニア州のLLC取引高税,2015年のネバダ州の商業税,2019年オレゴン州の事業活動税と導入州が増加しているためにその議論の分析は重要であると考える.

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