2023 年 30 巻 p. 47-65
自治体が直面している空き家や空き地の増加は,地方税収の減少につながる一方,これらの管理費用の増加により自治体財政に影響を及ぼす.地域社会にも負の影響を与える.本稿では,空き家や空き地にどのように対処すれば良いのかを考えるため,同様の問題に直面していたアメリカのオハイオ州カヤホガ郡クリーブランド市で活動しているランドバンクに着目し,どのような関与を行い効果を上げているのかを分析した.その結果,①ランドバンクの組織形態は非営利民間法人とし,理事会に現役の自治体幹部を含めることで,施策の実効性や都市計画との連動性が担保されること,②ランドバンクの活動を通じた利益や寄付で運営を賄うことは難しいため,政策効果を確認することをセットにしたうえで助成金で支援する仕組みとし,さらに助成金だけに頼らない仕組みを構築する努力が必要であること,③日本の場合は人口が減少していくため,空き家や空き地対策を通じて周辺住宅価格の上昇に結び付けることが難しい地域もあるが,空き家や空き地対策を行うことで,周辺の住宅価格の低下幅を抑えたり,地域の雇用を生み出す可能性があることがわかった.人口減少が続く日本では,活用されていない不動産を活用できるような見直しや規制の変更に向けた議論をさらに進めていくことが必要である.