本研究では中国朝鮮族の多言語使用の実態を明らかにするために、延辺朝鮮族の若年層を対象に、彼らの内的場面における朝鮮語、中国語、韓国語の実際の使用について分析した。分析の結果、内的場面における朝鮮族の若年層の言語選択は主に「習慣化された言語選択」と「調整としての言語選択」の二通りに分けて捉えることができた。前者に関しては機能的な言語選択が多く、朝鮮族の若年層が持つ言語序列意識が言語選択の要因となることが判明した。機能的な言語選択においては、公用語の中国語が選択される傾向が強いことが明らかになった。一方で、後者は、特定場面における明確な言語管理を伴うものが多かった。特に、若年層は自己開示と自己呈示において朝鮮語の使用を逸脱として留意する傾向が見られた。韓国語は若年層の内的場面において「共通語」としての一役を担い、若年層の間で好まれて使用されることが判明した。