2024 年 20 巻 1 号 p. 20_23-20_32
ドイツでは2005年の移住法の成立とともに、移民難民庁の管轄で移民のためのドイツ語の統合コースが国の政策として実施されている。その後、統合コースは何度か改革が加えられているが、2022年上半期までにおよそ290万人の受講者を数えている。また、2016年からは原則として統合コースの修了者を対象とした職業のためのドイツ語コースを実施している。この間一貫して変わらないのが、十分なドイツ語能力を備えた移民を労働市場に送りこむという姿勢である。その理念は両コースの教科書のシラバスや内容にも現れている。一方、統合コースの中でも比較的受講者の多い非識字者向けのコースの修了者にB1レベルに達する受講者が少ないことや、教師不足で受講までに長期間待たされることなど、課題も少なくない。日独では移民をめぐる事情は異なるが、移民に対する日本語教育にも示唆を得ることができる。