沙漠研究
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原著論文
2013年12月における愛媛県西条市付近での液体炭酸散布による人工降雨実験
真木 太一西山 浩司守田 治脇水 健次鈴木 義則
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2015 年 25 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

2013年12月27日に降水量の少ない瀬戸内海気候区の愛媛県西条市北方の,主として瀬戸内海上空で航空機により液体炭酸散布人工降雨実験を行った.雲頂高度2740 m,気温-13℃,風向西北西,雲底高度1070 m,気温-2℃,風向西北西,雲厚1670 mの下層域高度1370 mの積雲(気温-5℃)に液体炭酸を強度5.5 g/sで,11:23~11:48の内の約14分間,総量4.9 kg散布した.液体炭酸の散布によって,西条市役所・中心街で11:50頃にやや強めの降雨強度5 mm/h程度の降雨を5~10分間観測した.また,西条市消防本部では13:00(推測12:00直後)までに0.5 mmの降水を確認した.これらは人工降雨と推測された.液体炭酸散布後,11:30~11:50に積雲が西条市上空で急速に発達し短時間に降水となった後,背の高い積雲は局地的な人工降雨によって急速に衰退し,散布1時間後の12:30には山間域の雲も急激に消失した.西条市南部山間地では散布位置・時刻・風向から人工降雨の影響はなかったが,新居浜市南部山間域では人工降雨が顕著で降雨の終始を目視で確認できた.新居浜市消防本部の大生院,別子山では風向・風速・時刻等からそれぞれ0.5 mm,4.0 mmの人工降雨があったと推定された.四国中央市南部山間域のアメダス富郷では11:50~12:00に0.5 mmの降水を観測している.これは散布時刻・位置,風向西北西,風速15 m/s等を考慮して人工降雨と推測された.西条市・新居浜市・四国中央市付近では液体炭酸散布時の11:30頃にはすでに降水の可能性は減少した状況で,本来降らなくなっていた雲から人工降雨を起こした可能性が高い.徳島県三好市のアメダス池田の降雨0.5 mmとアメダス京上の降雨2.0 mmは,風向・風速,時刻等から人工降雨と判断された.その影響範囲は散布域の風下約80 kmにまで及び,中心線は東西の別子山-京上であった.2013年12月27日の西条市付近での人工降雨実験は成功したと判断される.

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