抄録
内蒙古典型草原の地上部生産量(AGP)の地域差に関与する土壌成分を明らかにするために,生産量および放牧条件が異なる3地区の典型草原から,土壌および植物を採取した.克什克騰旗(採取地1:S1),錫林浩特市(S2),四王子旗(S3)に採取地を設定した.3段階の放牧条件区(高放牧圧:HG,低放牧圧:LG,禁牧:NG)を各採取地に設けた.5月上旬にHGおよびLGに,それぞれ,家畜からの防護柵(2 m × 2 m)を3個設置した.土壌および植物のサンプリングを行い,総窒素(TN),総リン(TP),硝酸態窒素およびリン酸の分析を行った. S2のHGにおいてのみ,AGP,植生および被度に対する放牧の有意な効果が認められた.この結果は,最も高い放牧強度を有するS2のH2における植生退化によるものかも知れない.一方,AGPと0-5 cmの深さの土壌中のTNとTPとの間に有意な正の相関関係が示された(それぞれ,r=0.820および0.543, P<0.05).土壌および植物中TPは1960年代の記録と比べて明らかに低かった.従って,土壌TPがAGPを制限する要因の一つかもしれない.しかし,土壌のリン酸および硝酸態窒素のレベルはいずれもAGPとの間に有意な相関関係が示されなかった.