沙漠研究
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原著論文
内蒙古の放牧強度の異なる典型草原における地上部生産量と土壌および植物中成分との関係
石川 尚人興野 若菜高 娃鳥蘭 吐雅阿拉騰達来後藤 正和田島 淳史
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2015 年 25 巻 2 号 p. 25-30

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抄録
内蒙古典型草原の地上部生産量(AGP)の地域差に関与する土壌成分を明らかにするために,生産量および放牧条件が異なる3地区の典型草原から,土壌および植物を採取した.克什克騰旗(採取地1:S1),錫林浩特市(S2),四王子旗(S3)に採取地を設定した.3段階の放牧条件区(高放牧圧:HG,低放牧圧:LG,禁牧:NG)を各採取地に設けた.5月上旬にHGおよびLGに,それぞれ,家畜からの防護柵(2 m × 2 m)を3個設置した.土壌および植物のサンプリングを行い,総窒素(TN),総リン(TP),硝酸態窒素およびリン酸の分析を行った. S2のHGにおいてのみ,AGP,植生および被度に対する放牧の有意な効果が認められた.この結果は,最も高い放牧強度を有するS2のH2における植生退化によるものかも知れない.一方,AGPと0-5 cmの深さの土壌中のTNとTPとの間に有意な正の相関関係が示された(それぞれ,r=0.820および0.543, P<0.05).土壌および植物中TPは1960年代の記録と比べて明らかに低かった.従って,土壌TPがAGPを制限する要因の一つかもしれない.しかし,土壌のリン酸および硝酸態窒素のレベルはいずれもAGPとの間に有意な相関関係が示されなかった.
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© 2015 日本沙漠学会
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