2012 年 2 巻 1 号 p. 147-166
「メモからのフルメッセージ復元練習による言語産出訓練」は通訳訓練の中で行われている訓練法をもとにしているが、この訓練法が一般の大学生に対しても応用可能か、また応用できるとすればどのような効果が期待できるかについて検証することを目的に、英語を専門としない大学2年生 35 名を対象に 15 週間のパイロットスタディを行った。学生は、インプット段階で十分に学習済みの英文テクストを使って、その内容のメモ(スケルトン)を見ながらオンラインで口頭で原文を復元することが求められた。実験期間前後に行ったプレテストとポストテストの結果から、ほとんどの学生に文構築能力の伸長の可能性が示唆された。また、このトレーニングに対する学生の感想は概ね好ましいものであり、自己効力感もあったことが伺える。この結果から、この訓練が Swain の Output hypothesis の理念に沿った訓練法であり、Levelt の言語産出モデルの観点からは言語産出プロセスの文法符号化の機能強化に強く働きかける可能性があることを論じる。