2012 年 2 巻 1 号 p. 189-200
理論上の自己調整学習モデルでは、学習者は自己の学習の全過程をモニターし、適切な修正を試みながら学習を進めていく。ところが、近年の大学生の中には自分の力でその循環をうまく回していくことができない者が多い。適切な目標設定ができない、自己学習活動を適切にモニターできない、失敗の原因を適切なところに求めることができない等の問題を抱え、結局、学習の輪からドロップアウトすることなる。本研究は、そうした現状を踏まえ、自己調整学習理論に拠って学習者が記録した learning log (学習記録) の分析を通し、学習者が困難を抱える場面を抽出することを目的としている。対象者は大学 1~2 年生 106 名で、分析にはテキストマイニングアプリケーションである KHCoder を使用した。習熟度別に分析をした結果、初級学習者グループでは自己省察、学習活動のモニターに、また、初級、中級学習者グループどちらも、学習活動の遂行コントロールの段階に問題があることが示唆された。