2012 年 2 巻 1 号 p. 201-216
本論文は、時事英語のトピックを使ってライティングを教える中で、教師が生徒に提供するフィードバックの意義について行った論考である。特に、筆者が過去9年間にわたって高校教員の現職教育に携わってきたため、教員研修の中で受講生に書かせたライティング指導の中での経験に関連づけて考えたものである。フィードバックの効果に関してはFerrisとTruscottの議論が有名であるが、この論文ではその議論の原点と言うべき(1995 年のFerrisと1996年のTruscottの)論文を取り上げた。まず両者の論文の類似点と相違点を検証した結果、両者とも学習者の学習過程の向上に情熱を傾けていることがわかった。違いはそれぞれの調査または研究の成果の捉え方にあった。次に日本の教育現場で行われたライティング指導の実際に基づく研究2つを検証した。その結果は、両方とも研究対象となっている学習者の学習過程には十分な配慮がされていないことが判明した。最後に、最近のフィードバック研究から学習者の学習過程により多くの注意が向けられたものを概観し、それを2011年度筆者が関わった教員研修の一事例に当てはめてライティングおよびライティング指導について考えてみた。