日本顎顔面インプラント学会誌
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症例報告
インプラント周囲に放射線性顎骨壊死を生じ保存的に治療した1例
明石 昌也鰐渕 聡岩田 英治筧 康正長谷川 巧実鈴木 泰明古森 孝英
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2017 年 16 巻 2 号 p. 75-80

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抄録

 頭頸部癌に対する放射線治療は重要な治療法であるが,重篤な合併症の一つに放射線性顎骨壊死がある.最も良く知られた発症の誘因は,抜歯などの外科的侵襲である.今回,われわれはインプラント周囲に放射線性顎骨壊死を生じ,長期に渡る保存的治療ののちに腐骨分離した1例を経験したので報告する.

 症例は68歳の女性.左側顎下腺腺様囊胞癌の診断のもと,手術と術後化学放射線療法が施行された.放射線治療から3年後,右側下顎に放射線治療前より埋入されていたインプラント周囲溝からの排膿を伴う感染所見を認め,当科を受診した.インプラント周囲の放射線性顎骨壊死の診断のもと,局所の洗浄や抗菌薬経口投与などの保存的治療を継続し,放射線治療から5年後インプラントと腐骨が一塊に分離したため,局所麻酔下に除去した.

 放射線性顎骨壊死は多くの場合難治性であり,治療法は随伴症状の重篤度や全身状態などを総合的に判断し選択する必要がある.予防にはインプラント周囲の衛生状態の維持を目的とした放射線治療後の口腔衛生管理がきわめて重要である.

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© 2017 公益社団法人 日本顎顔面インプラント学会
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