日本顎顔面インプラント学会誌
Online ISSN : 2433-5509
Print ISSN : 1347-894X
ISSN-L : 1347-894X
総説
口腔・顎顔面インプラント治療と心身症
~どう対応するか~
式守 道夫
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 18 巻 1 号 p. 5-10

詳細
抄録

 顎顔面インプラント治療で治療者が心理・精神的状態の諸問題に触れる機会は少なくない.歯・顎顔面疾患患者の術後の課題としては,咀嚼障害,審美的障害,形態的障害,コミュニケーション障害,嚥下障害などが挙げられる.

 それらの問題を有する患者の来院の動機が直ちに主訴に結びつくか疑問が残る.最初の面接で, 患者が直ちに主たる訴えを告げてくれるとは限らない. 日常の診療では,精神疾患を有する患者に遭遇する機会が少なくないと予想される.

 これらを考慮して,歯・顎そして口腔腫瘍患者の術後の諸問題を有する患者での,身体障害と精神的状態との関連を考えてみたい.

 これには,身体的障害,精神的状態,インプラント治療,付随する手術,治療への患者の負担と医療者からの支援,精神的状態への支援などが関連すると思われる.これらのうちで精神的状態への気づきと支援を,誰がそれを行うかについてはほとんど議論がなされてこなかった.

 実際の医療現場は,あいまいさに満ちており,期待した答えが得られない場合も多いと指摘されている.このような指摘もあるので,「医療(インプラント治療)もあいまいさを含んでいることを,日頃から患者に説明する必要があるのではないか.」と考える.

 したがって,このような課題を議論することは有意義となろう.

 この論文では,口腔外科から見たインプラント治療と患者の心理・精神状態について次の点から検討する.(1)臨床の現場で,医療面接で問題となりそうな状態の患者に気付くことは可能であろうか.(2)治療者が,マスクされた精神的状態の気付きと対応はどのようにすべきか.(3)つまり,インプラント治療者と精神科医あるいは歯科心身症専門医とのコラボレーションはどのように対応したら,患者にとって良い結果となるかなどが課題となろう.

著者関連情報
© 2019 公益社団法人 日本顎顔面インプラント学会
前の記事 次の記事
feedback
Top