2001 年 21 巻 5 号 p. 315-323
近年の手術の低侵襲化,ロボティクス化に伴い,外科医には手術に関する高度な技術と豊富な経験が要求されつつある.特に心臓血管外科では難易度の高い手術が多く,手技の習熟や術前計画をサポートするシステムが望まれている.これらの要求を背景に,本研究では心臓外科手術を対象としたVRシミュレーションを提供するActiveHeartシステムを開発した.本システムは,心臓の時系列形状データに対する幾何学的かつ力学的なシミュレーションフレームワークを備えており,リアルタイムに拍動する心筋や大動脈壁への作用に対する変形や破壊を表現する.シミュレーション結果は,視覚的かつ力覚的なフィードバックとして,操作者へ対話的に提示される.つまむ動作や奥行きのある切開創の実現,術具と人体組織間の物理的な制約の記述によって,リアリティのある術中環境が提供される.本稿では,シミュレーションに用いた要素技術と共に,実測データの可視化と診断,手術手技トレーニング,術前プランニングへの応用例を紹介し,提案システムの有効性を示す.