臨床分野での意志決定支援の自動化は,医師の判断の正確さ,客観性の向上や疾患の早期発見を支援するために重要な課題であると指摘されている.中でも臨床診断支援に関して種々の研究が行われているが,対象となる病態・疾患が少なく,一般内科診断支援に利用できているとは言えない.本論文では,医療タスクの分析と患者からの情報の構造化による医療のモデリング法を示し,診断が制御対象に相当する患者の同定とみなせることを指摘する.医師が診断を行うときの基本情報として,患者から取得する症状・所見と血液化学検査データが生体系の機能低下や障害を表す基本情報であるという点に着目した一般内科診断支援システムの構築について述べる.患者モデルと病態・疾患モデルの概念を述べてシステム同定(診断)アルゴリズムを提案し,実際に内科医療診断用に構築したシステムについて述べる.診断アルゴリズムは血液化学検査データの個人の基準値設定と症状・所見のそれぞれを病態・疾患別に重み係数を変えた線形結合和の計算処理を基本としている.システムはNEXTSTEP 3.3JのInterface Builderを利用し,Objective-C言語を用いて開発した.実行プログラムのファイルサイズは約4 MB程度となった.医学雑誌症例報告からのデータを利用した本システムの探索率は82.6%となった.早期診断への活用例と発症頻度の低い疾患の診断への活用例を症例により示す.これらの結果は,本手法の有効性,有用性を示している.