2002 年 22 巻 6 号 p. 445-452
電子カルテの普及には診療点数によって医療施設にインセンティブを与えることが有効と考えられる.医療情報システムに間接的に関連する診療報酬としては,X線写真のデジタル映像化処理加算がある.そこで厚生労働省の統計データを用いて1986年から2000年までのデジタル映像化件数の推移を調査したところ,1996年を境に急速にデジタル化が進展していることが明らかになった.これは同年の診療点数の増額と,前年のデジタルファイリングフォーマットの標準化が大きく寄与していると考えられる.また毎年のデジタル加算による診療報酬の総額と,一方医用画像ネットワークシステムの市場規模には強い相関関係があり,医療施設がデジタル加算を原資としてシステムの導入を行っていることが強く示唆された.電子カルテの普及のためには,X線写真のデジタル化をモデルとした取り組みが有効であると考えられる.